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映画『サンサーラ』
エンディングのクレジットに『ジグザグの試み(Un essai de zigzag)』とあった。主人公サンサは世界中を旅する。パリ、リスボン、ミラノ、サンクトペテルブルグ、東京、カイロ、・・・でも、一般の観光旅行者というより、密入国者に近い怪しさを漂わせている。なんだかんだと国境でもめるわりにすんなり入国できるのは、お役人にお目こぼししてもらう特別な才能も持っているらしい。パリのモンマルトルで育ったといってるけど、どこのコミュニティにも属していない男。茶色の革ジャンを着たまま10年も風呂に入ってなさそうなむさくるしい格好だが、不思議にどの国に行っても地元の女たちにもてる。サンサがパリに戻ってきて北駅で当局に尋問されたり、他の移民たちと会話する最初の10分ほどで、主人公がどんな人物かを観客に分からせてしまうから、この映画を撮ったジークフリート(名前が怪しい!)は凄いと思う。
実は2年前にも東京映画祭でこの『サンサーラ』を見ていて、会場(渋谷文化村)で、監督・脚本・撮影・音楽をひとりで手がけるジークフリートの姿をロビーで見かけた。あれが彼だと誰もいってないけど、僕はジークフリートだったとなぜか確信している。派手な襟巻きをしていたことをのぞけば、主人公サンサとほとんど変わらない風貌。上映会のためにわざとそうしていたのかもしれないが、サンサ演じるロシュディ・ジェムを少し小柄にしたような感じで、得体の知れない不思議なオーラを発する人物であることは一目瞭然だった。
主人公サンサは世界中を旅するから、この作品は一種のロードムービーと言えるかもしれない。今回再びこの作品を見て、ボーダーレスな世界を描くビデオ・ドキュメンタリーという印象が強かった。国籍の異なる多彩な人物が彼の旅の途上に登場する。ヴァイオリニストのイヴリー・キトリス、先日僕もコンサートにいったアルゼンチンのピアニスト、マルタ・アルゲリッチ、そして日本の作家・安部譲二までも(前者ふたりは、実際にあった日本での共演コンサートのリハーサルが写し出されていた)。中央アジアの砂漠にたちつくすサンサ(ロシアから陸路で移動しているのか?)。そして、雑踏の中でビデオが捉える様々な階層のインド人たちの顔、顔、顔。手持ちビデオのぶれた映像が延々と続く。混沌とした国境を越え、世代や文化の違いを越えて、人間の魂の在処を尋ねる旅のドキュメンタリーという印象を持ったのは、このときだ。

偶然といえば都合よくできすぎているくらい、サンサと老音楽家(イヴリー・ギトリス)が世界各地で出会う。きっと、このおしゃべりな老音楽家は、似顔絵描きサンサのもうひとつの姿なんだろう。不思議な取り合わせだ。片や世界で名を知られた音楽家。片や、モンマルトルのボッタクリ似顔絵描き。怪しさでは安部譲二も負けてない。登場人物全員をジークフリートは自分の分身に見立てているのかもしれない。ちょっとうがった見方をすると、僕は国のない民ユダヤ人のイメージがあると思う(今はイスラエルという国があるわけだけど)。サンサはみかけはアルジェリア系っぽい。音楽家イヴリー・ギトリスは映画からユダヤ系の人に違いないと感じたので、あとで調べたら、やはりそうだった。そうはいっても、この映画は人種主義とは無関係。

前作『ルイーズ(テイク2)』(エロディ・ブーシェズ主演)ではパリの不良たちがアンダーグランドな世界でおっかけっこしているうちに、パリのオペラ座のレッスンスタジオにまで踏み込んでいた。ジークフリートはジャンルを飛び越える越境者と位置づけられるかも。東京都写真美術館もいいけど、できたらもっと一般的な映画館で上映してほしい作品だ。

追記:この映画のオフィシャルサイトにはジークフリートのプロフィールがあるぞ、と思ってみたら、「Siegfried: フランス生まれ。年齢、不明。住所、不定。名字は税関でしか明らかにせず、1年の大半を旅して過ごす根っからの自由人。映画監督としてだけでなく、ミュージシャン、そしてフォトグラファーとしても幅広く活躍している』とあるだけ。いろいろ調べても、やはり正体不明。こんど見かけたら、腕ひっつかまえて、「お前何者だ」って聞いてやりたい。
| 2005年2月の映画 | 11:15 | comments(0) | trackbacks(1) |
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怪しげな男
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| 【トーキョー日記】 | 2005/03/01 1:17 AM |