CATEGORIES
RECOMMEND
MOBILE
qrcode

<< 映画 『Ray <レイ>』 | main | 映画『きみに読む物語』 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
映画『トニー滝谷』
村上春樹による短編小説の映画化。イラストレーター、トニー滝谷をイッセー尾形、その妻を宮沢りえが演じる。このふたりが主要な登場人物で、他は存在感が薄い。というより、主役も含めて登場人物の存在感が全体的に希薄な感じがする。いちばん存在感のあるのはナレーションを担当する西島秀俊の声かもしれない。また、ナレーションとして読み上げられる言葉の一部が、役中の人物によって発せられることがしばしば。ちょっとややこしい形式だが、演劇では時々ある手法かも。イッセー尾形も宮沢りえも、実年齢をあまり感じさせないのは、彼らの生活臭を感じさせないように撮影してあるせいだろう。

簡素な部屋に置かれた机でせっせとイラストを描く主人公、宮沢りえの寂しげな表情を捉えるクローズアップ、丘の上にぼんやり立つひとの頭上に雲が流れる風景。各シーンは一見互いに関連性なく、日常から切り取られた風景のように見える。トニー滝谷(イッセー尾形)の少々変わった生い立ちが紹介され、彼が仕事上の付き合いから、かなり年下の女性(宮沢りえ)と出会って結婚。彼女には、絶えず新しい洋服を買い続けるという奇癖があって、それが後の不幸の原因となる・・ちょっと奇妙なストーリーだけど、人を愛したいという気持ちと、また、何かに執着していないと落ち着かない性癖、孤独から逃れられない宿命などに、ちょっと想いを馳せたりして、それなりに興味深かった。
特に不慮の事故のあと、トニー滝谷が妻の元衣装部屋にひとり寝ころんでいるシーンがもっとも好きだ。村上春樹の小説の多くで、このように登場人物ががらんとした場所にひとりたたずんでいることがよくある。小説によっては、車の座席にいたり、ビジネスホテルの狭い部屋だったり、時には井戸の中だったり。そうした空虚な場所は、ひたすら空虚であるがゆえに、過去から現在へと濃密に流れこむ時間の溜まり場となり、離れた場所で発生する出来事を互いに結びつける糸の結び目もなる。そして人間の存在を強烈に意識させる濃密な空気の匂いが、そうした空間に満たされるのだ。「トニー滝谷」という75分の映画は、きっとこのわずか1分ほどのシーンを見せるために製作されたのではと、僕には思われるくらい、ここが印象に残った。この部屋はまた、トニー滝谷が生まれる前にトニーの父親が収監されていた中国の刑務所の独房とも、外見上の相似関係が生じていた。

村上春樹の小説の世界は映画に向かないと思っていた。けど、この市川準監督の映画は、映像が自己主張せずに、文学世界の雰囲気を画面に漂わすことだけを念頭に、シナリオを組み立て各場面を撮ったという印象。全体に彩度を薄くして背景をぼかした白っぽい映像で、個人的には好きでないけど、村上文学の雰囲気だけでも映像が伝えているところは評価できると思う。ひとつの実験的な試みとして、一見の価値はあるのでは。といっても、私は村上春樹は好きではありません、とか、小説を読めば十分です、とかいう人に説得力のある言葉も見つからないのも事実だが。
| 2005年2月の映画 | 00:22 | comments(0) | trackbacks(1) |
スポンサーサイト
| - | 00:22 | - | - |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://jokigen.jugem.cc/trackback/335
トラックバック
トニー滝谷
「トニー滝谷の本名は、トニー滝谷だ。」 エジプト帰国後、初の自腹鑑賞はトニー滝谷。今日はサービスdayなので、1000円で鑑賞。 村上春樹の短編小説を市川準が監督した作品。主演はイッセー尾形と宮沢りえ。75分の短編(?)映画。 孤独な人生をすごしてきたト
| ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! | 2005/03/02 3:29 AM |