CATEGORIES
RECOMMEND
MOBILE
qrcode

<< 釜山のレトロ酒場 | main | 大学入学資格の試験科目に手話 (フランスの話) >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
映画「ハナのアフガンノート」
「今、あなたに未来が開かれてるの。こんな素晴らしいチャンスを逃すなんて、あとで後悔しても知らないわよ!」
サミラは一人のアフガン女性を車に引き込み、映画出演を承諾してもらおうと、必死にまくしたてる。傍らにいた父親モフセンまでが口を挟み、「今、君に話しかけている女性は世界中の新聞で紹介された有名な芸術家なんだぞ!」と脅す。イスラム圏の人々の交渉では声を張上げることが必須のようだ。口角泡を飛ばすとはこのこと。そんな会話を妹のハナが撮影している。なんという家族・・・と絶句。

「ハナのアフガンノート」は、イラン人女性監督サミラ・マフバルバフが「午後の五時」製作のためにキャスティングする過程を、サミラの妹ハナのビデオカメラによって捉えたメイキング・フィルムだ。監督サミラは、街の住民でこれぞと思う人々に話しかけ、出演交渉を行う。「午後の五時」に出演する俳優たちの大半は、現地で生活する住民たち。演技の訓練を積んでいない素人たちを起用するからには、その選び出しと出演交渉が大きな仕事になってくる。ビデオカメラを携えて大人たちの間に割り込み、好奇心いっぱいの少女の視線で、キャスティングの情景を捉えたハナ(当時13歳)の映像は、すこぶる面白い。イスラム圏の人々に独特の喧嘩腰の話し合いと、女性監督サミラの押しの強い性格がよくあぶりだされている。

この作品はハナが2ヶ月間、総計760時間に及んで撮影した映像を、他のスタッフの協力を得て73分に編集されたものだそうだ。主に4つの件によって構成。1)義父役の老人探し 2)ヒロイン役の女性候補の一人目と交渉して失敗 3)ヒロイン役二人目と交渉し、決別寸前で成功 4)病気の赤ん坊探し

サミラが最初に交渉する女性は、まだ若く独身で、清楚で知的な雰囲気を漂わせているが、映画出演という特殊な事態が怖くて首を縦にふらない。一方、二人目の候補の女性は、すでに母親で、若々しさがなく、美人タイプでもない。しかし、その自信に満ちた口調、そしてハナが思わずズームアップしてクローズアップで見せたように、目に力が漲っている。最初は不安そうなサミラも、とうとう彼女に腹を決める。そういった過程がよく映像に捉えられていて感心させられた。
なにより、息を呑むほど面白いのが“病気の赤ん坊探し”の件だが、これは言わずにおこう。奇妙なマフマルバフ家族の最年少メンバー、ハナによるこの作品は、確かに一見の価値がある。

なお、「午後の五時」に詩人役で抜擢された男性が、このキャスティングの間、通訳&コーディネーターとして協力しているところも面白かった。彼は実際にパキスタン帰りの詩人だそうで、「アフガン零年」の製作にもかかわっていたらしい。ミステリアスな微笑を浮かべる印象的な男だ。

いつだったか、ロシアの監督ソクーロフが来日したときに、「どうして素人俳優を起用するのですか?」と質問した日本人がいたことを思い出す。その答えは、
「一般の人にとって、一本の映画に出演するというのは、その人の一生を変えるほどに大変なことです。これまでのすべての生活を投げ出すほどの決心がいる。そんな唯一無二の体験をすることから生まれる緊張感が、シナリオ上の架空の人物に思いもかけなかった存在感を与えてくれるのです」
確かそんな答だったと思う。
| 2004年7月の映画 | 00:09 | comments(0) | trackbacks(3) |
スポンサーサイト
| - | 00:09 | - | - |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://jokigen.jugem.cc/trackback/129
トラックバック
マフマルバフ ファミリーナイト
マフマルバフ ファミリーナイト行ってきました。 オールナイトで映画を観たのは実は初めてでした。 映画館を出て、朝日がまぶしすぎて感動しました。 ついでに朝の銀座を散歩してから帰ってきました。 アフガン女性にまつわる内容が主だったので、 女
| magicpie* | 2004/07/07 12:51 PM |
マフマルバフ ファミリーナイト感想
マフマルバフ ファミリーナイト感想 「午後の五時」★★★★ タリバン政権崩壊後のアフガンで父と義姉と暮らすノクレ。彼女は秘かに一般学校に通い、この国の大統領になる日を夢見るが……。 :「ハナのアフガンノート」とセットで観るとより魅力的 「おば
| magicpie* | 2004/07/07 12:52 PM |
『午後の五時』『ハナのアフガンノート』覚え書き。
『午後の五時』は撮影当時22歳のサミラ・マフマルバフの作品で、『セプテンバー11』にも出品したことのあるイラン人女性監督。『ハナのアフガンノート』はその妹、ハナが13歳の時カメラを回した、『午後の五時』の出演者に関するスカウティングビデオ。 カンヌで審査
| kiku's | 2004/07/26 2:54 PM |